Anton Reicha (1770-1836) -
Etudes ou Exercices pour le Piano-Forté dirigées d'une manière nouvelle. Ouvrage également utile aux Personnes qui veulent avoir un Talent distingué sur cet Instrument et à celles qui parvenues à ce point veulent s'y maintenir, Op. 30 (Paris, ca. 1800-01)
2部20曲からなる
アントニーン・レイハ (アントン・ライヒャ) 作曲「エチュード集またはエグゼルシス集 Op. 30」の内容についてまとめてみました。第1部の各練習曲には「12長音階」、「12短音階」、「半音階」、「トリル」、「装飾」、「分散和音」、「三度」、「音部記号」、「オクターヴ」、「異名同音」といった課題を示す表題がついています。
1ère partie, 1er exercice: Les douze gammes majeures. Allegro
第1部第1番「12長音階」。順にホ、ハ、変イ、変ニ、嬰へ、ニ、ト、イ、ヘ、変ロ、変ホ、ロの各長調の上行音階が現れ、最初のホ長調に戻って終止します。
1ère partie, 2ème exercice: Les douze gammes mineures. Fantaisie
第1部第2番「12短音階、幻想曲」。順にイ、ニ、ト、ハ、ヘ、変ロ、変ホ、嬰ト、嬰ハ、嬰ヘ、ロ、ホの各旋律的短音階の上行音階が現れ、最初のイ短調に戻って終止します。
1ère partie, 3ème exercice: Gamme chromatiques. Allegro
第1部第3番「半音階」ト短調。
1ère partie, 4ème exercice: Les cadences. Allegretto
第1部第4番「トリル」ハ長調。
1ère partie, 5ème exercice: Les agremens. Largo
第1部第5番「装飾」ハ長調。装飾音の練習曲。
1ère partie, 6ème exercice: Les accords brisés
第1部第6番「分散和音」。1オクターヴ差、両手ユニゾンの練習曲。16分音符による無窮動。4分の4拍子の記号 (C) が書かれていますが、16拍ごとに縦線で区切られています。
調号は付いていませんが嬰ヘ長調で終止します。
1ère partie, 7ème exercice: Les tierces. Allegro Moderato
第1部第7番「三度」ハ長調。三度重音の練習曲。
1ère partie, 8ème exercice: Les clefs. Larghetto
第1部第8番「音部記号」。高音部譜表では一音ごとにハ音記号 (ソプラノ記号、アルト記号、テノール記号) やト音記号 (ヴァイオリン記号) が挿入され異様な譜面となっています。小節内でテノール記号→ソプラノ記号→アルト記号→ヴァイオリン記号→ソプラノ記号→アルト記号という決まった順で並んでいるのは何か理由があるのでしょうか。
ヴァイオリン記号とバス記号の2種の音部記号による通常の記譜で書かれた楽譜 (Voici le même éxercice avec les deux clefs ordinaires.) も掲載されています。
1ère partie, 9ème exercice: Les octaves. Allegro
第1部第9番「オクターヴ」ハ短調。
1ère partie, 10ème exercice: L'enharmonique. Andante Sostenuto
第1部第10番「異名同音」。高音部譜表、低音部譜表が異名同音調である変ト長調と嬰ヘ長調の調号でそれぞれ書かれています。異名同音というと
ジャン・フィリップ・ラモー (Jean-Philippe Rameau, 1683-1764) の
新クラヴサン組曲集第2番に含まれる同名の曲や
シャルル・ヴァランタン・アルカン (Charles-Valentin Alkan, 1813-1888) の
エスキス集 Op. 63 に含まれる
Les enharmoniques が思い浮かびます。レイハは後に「
フーガの手法による練習曲集」 (Études dans le genre fugué, Op. 97) でも同名の曲を書いています。
2ème partie, 1er exercice: Adagio molto et Sostenuto
第2部第1番 変ホ長調。
2ème partie, 2ème exercice: Allegro poco Vivace
第2部第2番 変ロ長調。
2ème partie, 3ème exercice: Andante un poco Adagio
第2部第3番 ニ長調。
2ème partie, 4ème exercice: Allegro un poco Vivace
第2部第4番 ト長調。混合拍子 (Mesure composée) である5拍子 (3/8 et 2/8) の練習曲。
2ème partie, 5ème exercice: Andante
第2部第5番 変ホ長調。
トレモロが多用されます。
2ème partie, 6ème exercice: Allegretto
第2部第6番 ト長調。同音連打の練習曲。
2ème partie, 7ème exercice: Un poco Largo. Harmonie
第2部第7番 ホ長調。
2つの幻想曲 (1re Fantaisie composée sur l'Harmonie précédente, 2ème Fantaisie) が付いています。
2ème partie, 8ème exercice: Allegro
第2部第8番 ハ長調。16分音符による無窮動。
2ème partie, 9ème exercice: La fûgue. Allegro Moderato
第2部第9番「フーガ」ヘ短調。この曲は「36のフーガ」 (
36 Fugues, Op. 36) にも収録され、 Op. 36 No. 11 の番号も与えられています。
2ème partie, 10ème exercice: Adagio molto
第2部第10番 ハ長調。四重奏の総譜、あるいは4手連弾譜のように見えますが、上2段を右手 (Droite) で、下2段を左手 (Gauche) で演奏するようです。しばしばハ音記号 (アルト記号、テノール記号) が出てきます。これはルネサンス、バロック期の鍵盤曲でも使われた総譜記譜 (オープンスコア, open score) を視奏するための練習曲とも考えられるでしょうか。
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