2012-12-16

Eduard Franck - Allegro in A minor, Op. 3/3

Eduard Franck (Germany, 1817 - 1893) - 3 Character Pieces (Charakterstücke) for Piano, Op. 3 (ca. 1839); No. 3. Allegro in A minor.

エドゥアルト・フランク (Eduard Franck, 1817-1893) 作曲の3つの性格的小品作品3より第3曲「アレグロ イ短調」を弾きました。作曲家のフランクといえばベルギー出身のセザールが有名ですが、こちらとは親族の関係ではないようですね。エドゥアルト・フランクはプロイセン王国ブレスラウ(現・ポーランド領ヴロツワフ)に生まれ、兄には作家のヘルマン (Hermann Franck, 1802-1855), 医師・音楽家のアルベルト (Friedrich Albert Franck, 1809-?) がいました。デュッセルドルフとライプツィヒでフェリクス・メンデルスゾーンに師事し、そこでローベルト・シューマンやウィリアム・スターンデイル・ベネットといった音楽家と交友を深めたそうです。ヴィルヘルム・タウベルトに師事したピアノ奏者トニー・セシリー・ティーデマン (Tony Cäcilie Thiedemann, 1827 - 1875) と1850年に結婚し、息子のリヒャルト (Richard Franck, 1858 - 1938) もまた、作曲家・ピアノ奏者になりました。現在では商業録音により管弦楽曲と室内楽曲がいくつか知られていますが、ピアノ曲もたくさん書いているようです。初期のピアノ作品は Steffen Fahl, Klassik-resampled "E. Franck - Frühwerk" で音源とともに紹介されています。

2012-12-07

Salomon Jadassohn - Prelude and Fugue, Op. 56/1

Salomon Jadassohn - 18 Preludes and Fugues, Op. 56; No. 1 in C sharp minor 思い入れのある曲というのはなかなか録音に踏み切れないものです。この曲も最初に譜読みしてから1年過ぎ、その間に YouTube にこの曲の演奏動画が2つ投稿されました。初投稿にならなかったのは少し残念。「ロマン派のフーガ」というジャンル自体に好きな作品が多いんですが、それらの中でもこのザロモン・ヤーダスゾーンの前奏曲とフーガは特にお気に入りになりました。

2012-11-11

100th Death Anniversary of Józef Wieniawski

Józef Wieniawski (Poland, 1837 - 1912) - Suite romantique, Op. 41; No. 1. Évocation.
24 Études de mécanisme et de style, Op. 44; Nos. 10 & 14.

今日はポーランドの作曲家・ピアノ奏者であるユゼフ・ヴィエニャフスキ (Józef Wieniawski, 1837.5.23-1912.11.11) 没後100年の命日です。ヴァイオリン奏者・作曲家である兄のヘンリク (Henryk Wieniawski, 1835-1880) が広く知られていますが、残された作品を見ると弟のユゼフも作曲家・ピアノ奏者として卓越した音楽家だったことが窺えます。今日を記念してユゼフ・ヴィエニャフスキの作品から2曲の演奏を録音しました。以前録音した1曲と合わせて紹介します。演奏に使用した楽譜は Website of Walter Cosand で公開されているものです。

Suite romantique pour Orchestre, Op. 41 (Transcription pour Piano par l'auteur); No. 1. Évocation
(6 Pièces romantiques pour Piano, Op. 39; No. 2. Évocation)

「管弦楽のためのロマンティック組曲」作品41より第1曲「喚起」(作曲者によるピアノ編)。同じ喚起という曲名で「6つのロマンティックな小品」作品39の第2曲としている楽譜もあります。PTNAピアノ曲事典では作品39は最初の2曲を除いた形で「4つのロマンティックな小品」としていますが、その除かれた2曲が「ロマンティック組曲」の第1曲と第3曲にあたります。

24 Études de mécanisme et de style, Op. 44; No. 10 in C flat minor.

「技巧と様式の24の練習曲」作品44については録音が見つからないのが不思議なくらい充実した内容の練習曲集です。米国で発行された雑誌 “The Etude” の1900年の記事 (Some Neglected Etudes. - Etude Magazine. July, 1900) でも、ヨアヒム・ラフの "30 Progressive Etudes" とともに「無視されている練習曲集」として以下のように紹介されています。ここでも書かれていますが、各練習曲はそれぞれ異なる音楽家に献呈されています。例えば Homage to Paderewski に収録されている第22番はCDのタイトルが示すとおり、パデレフスキに献呈されています。

A work of quite a different caliber is the “Twenty-four Etudes de mécanisme et de Style dans Tous les Tous Majeures et Mineurs,” for the piano, by Josef Wieniawski, opus 44. A clue to the degree of difficulty will be given by simply mentioning the names of the artists to whom the various etudes are dedicated: Rubinstein, Moszkowski, Scharwenka, Sgambati, Diemer, Planté, Bülow, d’Albert, Grünfeld, Leschetitsky, de Pachmann, etc. Even Count Géza Zichy, the well-known one-armed pianist, is not forgotten, and has an etude for the left hand alone placed to his credit. The etudes are by no means as difficult, however, as the dedications would lead one to suppose.
同じ記事よりテオドール・レシェティツキに献呈された練習曲第10番については次のように書いてあります。緩やかなテンポの中で旋律を歌わせる練習曲です。
A fine “Andante Cantabile,” in C-sharp minor, and dedicated to Leschetitsky, will afford opportunity for study in melody playing.

24 Études de mécanisme et de style, Op. 44; No. 14 in E flat minor (Fantasia e fuga).

同じ練習曲から以前録音した第14番も掲載します。 “Con fantasia, largamente.” と書かれた幻想曲風の序奏を伴うフーガです。 “The Etude” の記事では次のように書いてあります。曲を献呈されたチャールズ・ハレの厳格さを示すようなフーガ、ということですね。

One of the interesting points of the collection is the cleverness with which Wieniawski has shown the characteristics of each pianist in silhouette fashion by introducing his various peculiarities. Thus, (...) a fugue dedicated to Charles Hallé reminds one of the austerity of that artist,

2012-10-31

Georgy Conus - Chanson triste, Op. 18/2

Georgy Eduardovich Konyus (Георгий Эдуардович Конюс, Russia, 1862 - 1933) - 3 Miniatures, Op. 18 (ca. 1902); No. 2. Chanson triste (Sad Song) in D minor.

ゲオルギー・コニュス生誕150年ということで、彼の「3つのミニアチュール」作品18から第2曲「悲歌」を弾きました。ついでにこの作曲家と音楽一族コニュス家について調べたことを以下にまとめます。録音こそ少ないですが、スクリャービンやグリエールに影響を与えたという彼の作品はなかなか興味深いですね。

コニュス家は音楽家の家系で、著名な音楽家を多数輩出している。ゲオルギーの祖父コンスタンタン・レオポール・コニュス (Consttantin Léopold Conus; Константин Леопольд Конюс) はフランス・ロレーヌ地方からの移民。コンスタンタンの息子エドゥアルト (Эдуард; Édouard エドゥアール, 1827 - 1902) はドイツ系コミュニティのあったサラトフに生まれ、ピアノ奏者として活動していたが、1867年からはモスクワのエカチェリーナ女子大学 (Екатерининский женский институт) で音楽教師としてピアノを教えていた。エドゥアルドの3人の息子ゲオルギー、ユーリー、レフも音楽家であり、ユーリー (Юлий; Jules ジュール; Julien ジュリアン, 1869 - 1942) はヴァイオリン奏者、レフ (Лев; Leo レオ, 1871 - 1944) はピアノ奏者となった。ゲオルギー (Георгий; Georges ジョルジュ, 1862 - 1033) はモスクワ音楽院のアントン・アレンスキーのクラスに在籍し、セルゲイ・タニェエフに音楽理論を、パーヴェル・パブストにピアノを師事。作曲家・音楽理論家として弟子のアレクサンドル・スクリャービンやレインゴリト・グリエールらに影響を与えた。娘のナターリヤ (Наталья, 1914 - 1989) はバレリーナ・振付師となった。

Franz Liszt / Conrad Ansorge - Es muss ein Wunderbares sein, S.314 (arr. for Piano)

Franz Liszt (1811-1886) - Es muss ein Wunderbares sein, S.314 (1852). Transcription for Piano by Conrad Ansorge (1862-1930). コンラート・アンゾルゲ生誕150年、ということで彼の編曲作品を一つ弾きました。彼の師にあたるフランツ・リストの歌曲「それはきっと素晴らしいこと」 (Es muss ein Wunderbares sein, S.314) のアンゾルゲによるピアノ独奏編曲です。

2012-10-28

Edgar Tinel - Ave Maria, Op. 14/4

Edgar Tinel (Belgium, 1854 - 1912) - 'Au Printemps' 5 Morceaux de fantaisie, Op. 14; No. 4. Ave Maria.

今日はベルギー・フランドルのピアノ奏者、作曲家であるエドハル・ティネル (Edgar Tinel, 1854.3.27-1912.10.28) の没後100年の命日です。5つの幻想的小品集「春に」作品14の第4曲「アヴェ・マリア」の演奏動画を、今年の春に投稿していたので貼っておきます。 IMSLP にあるピアノ曲集の楽譜を見る限り、面白そうな曲もいくつかあるのですが、演奏の機会には恵まれていないようです。

2012-09-24

Camille Saint-Saëns - Élégie, Op. 160 (Piano Transcription by the Author)

Camille Saint-Saëns - Élégie for Violin and Piano No. 2 in F major, Op. 160 (1920). Transcription for Piano by the Author.

今回はカミーユ・サン=サーンス (1835-1921) の作品を弾きました。ヴァイオリンとピアノのためのエレジー第2番作品160の作曲者自身によるピアノ独奏編曲です。サン=サーンスといえばフランスを代表する作曲家として知られていますが、同時に卓越したピアノ、オルガン奏者でもありました。自作の管弦楽曲、室内楽曲などのピアノ用編曲をいくつか残していますが、そういったものは「サン=サーンス・ピアノ曲全集」といったものからは取りこぼされがちのようです。

この曲はサン=サーンスの友人であった Charles de Galland (1851-1923) に献呈されています。Galland は1910年から1919年までアルジェ市長を務めた政治家でしたが、優れたヴァイオリン奏者でもあったそうです。楽譜には曲を献呈された Galland の名のほかに、 "En souvenir d'Alexis de Castillon" (アレクシス・ド・カスティヨンの思い出に) とも書かれています。アレクシス・ド・カスティヨン (1838-1873) もまたフランスの作曲家であり、サン=サーンスらとともに国民音楽協会 (Société Nationale de Musique) を設立しました。生年は3歳違いですが、サン=サーンスが86の長寿だったのに対し、もともと病弱だったカスティヨンは国民音楽協会設立の2年後、34歳で夭逝しました。85歳のサン=サーンスが47年前に亡くなったカスティヨンを思ってこのエレジーを作曲したわけです。題名はエレジー(悲歌、哀歌)ですが、深く悲しむというより穏やかな幸せを歌っているように感じます。カスティヨンの早すぎる死から約半世紀、サン=サーンスはその友人との楽しい記憶を思い出しながら作曲したのでしょうか。

2012-07-29

Sigismund Blumenfeld - Une pensée à Schumann, Op. 5/2

Sigismund Blumenfeld - 6 Brimborions, Op. 5; No. 2. Une pensée à Schumann

フェリクス・ブルメンフェリト (Felix Blumenfeld, 1863-1931) という作曲家、私もこれまでに彼の曲をいくつか弾いていますが、 IMSLP で彼の兄、シギズムント (Sigismund Blumenfeld, 1852-1920) の作品を見つけたので興味を持って目を通してみました。その中に「シューマンへの思い (Une pensée à Schumann)」という半ページほどの小品があり、ちょうど今日はロベルト・シューマンの命日ということでこの曲を弾いてみました。ピアノ小品集 6 Brimborions, Op. 5 の第2曲。 Brimborion とはフランス語で「つまらないもの」といった意味のようで、よくある曲名でいうと似た意味の「バガテル」に近いものなんでしょうか。シギズムントはピアノ奏者であると同時に歌手でもあったそうです。そういうこともあって、ピアノ曲、歌曲に名作をたくさん残したシューマンには特別な思いがあったのかもしれません。

2012-07-21

Ernst Pauer - Beethoven Studies

Ernst Pauer (Austria, 1826-1905) - 50 Beethoven Studies
オーストリアの作曲家、エルンスト・パウアー (Ernst Pauer, 1826-1905) のベートーヴェン練習曲 (50 Special and Preparatory Studies for the pianoforte intended as an assistance to a thoroughly artistic performance of Beethoven's Sonatas) から4曲弾きました。この練習曲集はベートーヴェンのピアノソナタのうち24曲をもとにして、50曲の練習曲としてまとめたものです。今回弾いたのはソナタ第1番と第8番「悲愴」にあたるものです。

Nos. 1 & 2 (Sonata No. 1 in F minor, Op. 2, No. 1)
Nos. 18 & 19 (Sonata (Pathétique) No. 8 in C minor, Op. 13)

2012-06-08

Emanuel de Beaupuis - Genre Schumann

Emanuel de Beaupuis (Italy, ca.1860 - 1913) - Romance in F sharp major (Genre Schumann)

今日はローベルト・シューマンの誕生日、ということで彼にちなんだ曲、イタリアの作曲家・ピアノ奏者のエマニュエル・ド・ボーピュイ作曲「ロマンス 嬰ヘ長調 (シューマン様式)」を弾きました。

ナポリに生まれたエマニュエル・ド・ボーピュイは、ナポリ王立音楽院でベニアミーノ・チェージ (Beniamino Cesi, 1845 - 1907) に師事しました。1889年にオーストラリアに移住し、メルボルンやシドニーでピアノと音楽理論の教師となりました。著名な弟子としてオーストラリアの作曲家・ピアノ奏者のロイ・アグニュー (Roy Agnew, 1891 - 1944) がいます。

出典: De Beaupuis, E. (Emmanuele) | Trove | National Library of Australia (オーストラリア国立図書館)

(改稿 2019-01-05)