Camille Saint-Saëns - Élégie for Violin and Piano No. 2 in F major, Op. 160 (1920). Transcription for Piano by the Author.
今回はカミーユ・サン=サーンス (1835-1921) の作品を弾きました。ヴァイオリンとピアノのためのエレジー第2番作品160の作曲者自身によるピアノ独奏編曲です。サン=サーンスといえばフランスを代表する作曲家として知られていますが、同時に卓越したピアノ、オルガン奏者でもありました。自作の管弦楽曲、室内楽曲などのピアノ用編曲をいくつか残していますが、そういったものは「サン=サーンス・ピアノ曲全集」といったものからは取りこぼされがちのようです。
この曲はサン=サーンスの友人であった Charles de Galland (1851-1923) に献呈されています。Galland は1910年から1919年までアルジェ市長を務めた政治家でしたが、優れたヴァイオリン奏者でもあったそうです。楽譜には曲を献呈された Galland の名のほかに、 "En souvenir d'Alexis de Castillon" (アレクシス・ド・カスティヨンの思い出に) とも書かれています。アレクシス・ド・カスティヨン (1838-1873) もまたフランスの作曲家であり、サン=サーンスらとともに国民音楽協会 (Société Nationale de Musique) を設立しました。生年は3歳違いですが、サン=サーンスが86の長寿だったのに対し、もともと病弱だったカスティヨンは国民音楽協会設立の2年後、34歳で夭逝しました。85歳のサン=サーンスが47年前に亡くなったカスティヨンを思ってこのエレジーを作曲したわけです。題名はエレジー(悲歌、哀歌)ですが、深く悲しむというより穏やかな幸せを歌っているように感じます。カスティヨンの早すぎる死から約半世紀、サン=サーンスはその友人との楽しい記憶を思い出しながら作曲したのでしょうか。